2020年2月

「恐れるな‼」-ある日の黙想から―

ヨセフ 松井繁美神父

「イエスは派遣するために、これと思う12人を呼び寄せられ」ます。(マルコ3章13節)
呼び寄せた目的をマルコは次のように記しています。「この12人がご自分とともにいるためであり、
また悪霊を追い出す権能を授けて宣教に遣わすためであった」と。(マルコ3章15節)
私たちも宣教のために派遣されている者のひとりとして、12使徒がどのように派遣されて行ったのかを
少し黙想してみたいと思いました。聖書の箇所としてはマルコ福音書3章13節~6章13節あたりとなります。
マルコが記しているように12人を呼び寄せた目的は二つありました。
一つ目は、ご自分とともにいるため。二つ目は、宣教に派遣するため。
なぜイエスは「ご自分とともにいるため」に12人を呼び寄せたのでしょうか。
それは、ともに時間をすごすことによってイエスとの親しさ、イエスとの信頼を深めるためであったと言えるでしょう。
そしてもうひとつは福音宣教者として教育していくためでもあったという事だと思います。
「親しさ、信頼」があってこそ初めて12人は出かけて行く事が出来たはずです。「
派遣」に先立ってマルコは3つの奇跡を連続して記しています。
どれもわたしたちがよく知り、親しんでいる奇跡物語です。それは、イエスに与えられている権能が
どういうものであるかを12人に、そして私たちに示すものです。
第一の奇跡は、嵐を静めるイエス(マルコ4章35~41節)
突然の大嵐に12人は恐れて、あわてふためきます。イエスは眠っていましたが起き上がって「静まれ」
と言って嵐を静めます。これは自然に対して与えられている権能を示すものです。
第二の奇跡はゲラサ人の地で悪霊を追い出す奇跡です。(マルコ5章1~20節)弟子たちは初めて
異邦人の地に足を踏み入れることになります。初めて異邦人の地に向かう弟子たちの心はどうだったでしょうか。
様々な不安を感じていたのではないでしょうか。
「大丈夫だろうか」「どんな人たちが住んでいるんだろうか」「うまくいくだろうか」など。
湖の嵐はもしかしたら12人のその心、大揺れに揺れる心も表していたのかもしれません。
そのゲラサの地で弟子たちはイエスが強烈な悪霊を追い出すという奇跡を目の当りにすることになります。
これはイエスに与えられた「悪霊に対する権能」を示しているといえるでしょう。
そして第三の奇跡が、病の癒し、死者のよみがえりの奇跡です。12年間、出血を患う女性。
どの医者にかかってもますます病気は悪くなるばかりです。
その女性が癒されます。そして12才になるヤイロの娘も死者のうちからよみがえらされます。
この奇跡は、イエスが「病に対して、死に対しても権威」を持っておられる方であることを示しています。
そして、連続する3つの奇跡の頂点をなすものであると言えるでしょう。
マルコ福音書は、そのように12使徒を派遣するにあたってご自分が御父からどのような権能が与えられて
いるかを使徒たちに示されるのを伝えています。
「私には自然に対しても悪霊に対しても、そして病、死に対してさえも、この世の全てのものに対して
一切の権能が与えられている。」そのわたしがあなた方を遣わす。
「わたしは、世の終わりまでいつもあなた方とともにいる」と言われます。
だから「行きなさい」「恐れるな‼」と。(マルコ5章36節)

教会報 2020年 2月号 巻頭言

 

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