2016年10月

難民クライシス

フランシスコ・マリア 古里慶史郎神父 

先日、ある若者のグループと、興味深いゲームをしました。その名も「難民クライシス」と言います。6人のグループに分かれ、それぞれ、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、11歳の女の子、6歳の男の子に分かれます。彼らは祖国を離れ、難民として外国に脱出することになりました。まず最初に、50項目ほどの家族の財産目録を渡され、「それぞれ6個ずつ、家族で話し合って分担して持ってください。残りは捨てていきます。話し合いの時間は10分です。すぐにトラックがやってきますよー!」とのアナウンス。

私は11歳の女の子の役になり、慌ててペット(犬)とペットフード、携帯電話や救急箱などを持ちました。しかし出発と同時に、「ペットは連れていけませーん!ペットとそれに関する荷物は置いてくださーい!」ということで、えっ!驚く間もなく、とあっという間に私の持ち物は半減します。その後も、「トラックの運転が荒くて、弟の荷物が吹き飛びましたー!お父さんは運転手と交渉しますが、もう取りに戻ることができませーん!」「女の子が転んで足を大けがしました!誰かおぶって、自分の荷物も半分手放してください!」などど、無情な指令が続きます。「え?え?え?」と驚いているうちに、家族の荷物はどんどんと減っていきます。

やがて、海につきます。すると、「船には、家族の半分しか乗れません。誰が乗って、誰が残るか、話し合ってくださーい!」
「えー!!!」この時点で大パニックです!まさか家族がこんな形でバラバラになるとは!私たちのグループは、先におじいちゃん、お父さん、女の子が船に乗り、おばあちゃん、お母さん、男の子はその場に残ることになりました。その後も怒涛の展開が続きます。「船の船長さんに、賄賂を払わなければいけません。お金をもっている人は出してくださーい!」「海が荒れ始めました!重い荷物は海に投げ捨ててくださーい!」

こうして、先発隊の家族3人が対岸に到着しますが、ここでゲームは終わります。この時点で、私の手の中には、毛布一枚しか残っていませんでした。お父さん、おじいちゃん、女の子(私)はほぼ手ぶらの状態で、これからどうなるんだろうと途方にくれ、しかも、後に残した家族の消息はまったくわからない、というところで「はい、お疲れ様でしたー!」という風にゲームは終わります。

このゲーム、実はカナダで、新しく難民を迎え入れるための、「どういう人たちがやって来るんだろう」ということをシミュレートして準備するために、シスターが修道院で実際に参加したものだということでした。

難民問題について、あらためて考えさせられました。また私の感想なのですが、対岸にほとんど手ぶらで到着した女の子としての私の心の中には、「こんなところで挫けちゃいけない、家族がまた1つに集まれるように、頑張らなければ!」という気持ちが強く残りました。

もし皆さんがこのゲームに参加すれば、どのような感想をお持ちになるでしょうか。

教会報 2016年10月号 巻頭言

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